このページでは、下請法が適用される業務委託契約書の作成に関するポイントを解説しています。

企業間取引である業務委託契約では、下請法が適用される場合があります。下請法は、親事業者(=委託者)を規制し、下請事業者(=受託者)を保護する法律です。

このため、委託者として業務委託契約を結ぶ場合は、常に下請法が適用されるかどうかを意識する必要があります。

逆に、受託者として業務委託契約を結ぶ場合は、いざとなったら、下請法の保護を受けることを想定しながら、事業を進めます。

特に、製造請負契約とソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約のように、半ば外注が前提となっているビジネスモデルの場合は、注意を要します。

このページでは、こうした下請法が適用される場合における業務委託契約書の作成、三条書面、五条書類、記載のしかたなどについて、解説します。




【意味・定義】下請法とは?

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

その名のとおり、下請法は、親事業者に対し、下請代金の支払遅延の禁止を中心とした、さまざまな義務を課し、また、親事業者の禁止行為を規定した法律です。

【意味・定義】下請法とは?

下請法とは、正式には「下請代金支払遅延等防止法」といい、親事業者に対し義務・禁止行為を課すことにより、下請代金の支払遅延等を防止するなど、下請事業者を保護することを目的とした法律をいう。

これらの親事業者の義務や禁止行為により、下請事業者は、強力に保護されます。

下請法そのものにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランス=業務委託契約の受託者の味方の法律





下請法が適用される業務委託契約の4つのパターン

下請法は4つの資本金のパターンと特定の業務内容に該当すると適用される

下請法では、すべての企業間取引が適用対象となるわけではありません。

下請法が適用となる企業間取引は、親事業者(委託者)と下請事業者(受託者)の資本金が、一定の区分のものに限られます。

この資本金の区分には、4つのパターンがあります。

そして、その4つのパターンに当てはまる企業間取引のうち、特定の業務内容のものが、下請法の適用対象となります。

下請法が適用される資本金の区分と業務内容

パターン1
親事業者下請事業者
資本金の区分3億1円以上3億円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  4. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン2
親事業者下請事業者
資本金の区分1千万1円以上3億円以下1千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  4. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン3
親事業者下請事業者
資本金の区分5千万1円以上5千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン4
親事業者下請事業者
資本金の区分1千万1円以上5千万円以下1千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)

これらの4つのパターンにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の対象かどうかの条件とは?資本金・業務内容(製造委託等)について解説





親事業者に作成・交付・保存の義務がある「三条書面」「五条書類・五条書面」

親事業者には書類の作成・交付・保存の義務ある

下請法が適用される場合、親事業者には、さまざまな義務が課されます。

そのうちの代表的な義務は、「三条書面」(下請法第3条)と「五条書類・五条書面」(下請法第5条)の作成・交付・保存の義務です。

業務委託契約書を作成する際には、業務委託契約書が、これらの三条書面と五条書類・五条書面に該当するように作成します。

何も意識せずに業務委託契約書を作成していた場合、結果として、下請法に違反していた、ということはよくある話です。

三条書面とは?

三条書面とは、下請法第3条に規定されている書面です。

下請法第3条(書面の交付等)

1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。

2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

【意味・定義】三条書面(下請法)とは?

三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者対し交付しなければならない書面をいう。

ここでいう「公正取引委員会規則」とは、「下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則」(以下、「下請法三条規則」といいます)のことです。

三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?12の法定記載事項や契約書との違いは?

五条書類・五条書面とは?

五条書類・五条書面とは、下請法第5条に規定されている書面です。

下請法第5条(書類等の作成及び保存)

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあつては、下請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保存しなければならない。

【意味・定義】五条書類・五条書面とは?

五条書類(書面)とは、下請法第5条にもとづき、親事業者が、作成し、保存しなければならない書類。

ここでいう「公正取引委員会規則」とは、「下請代金支払遅延等防止法第五条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則」(以下、「下請法五条規則」といいます)のことです。

五条書類・五条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の五条書類・五条書面とは?契約書と兼ねる17の必須事項とは?





下請法に適合した業務委託契約書の記載事項とは?

「親事業者の業務委託契約書=五条書類・五条書面」「下請事業者の業務委託契約書=三条書面」

さて、これらの三条書面と五条書類・五条書面ですが、業務委託契約書を三条書面と五条書類・五条書面(の一部)とすることができます。

通常、業務委託契約書は、2部作成し、親事業者と下請事業者がそれぞれ1部ずつ保管します。

ですから、親事業者の手元にある業務委託契約書は五条書類・五条書面、下請事業者の手元にある業務委託契約書は三条書面となるように、業務委託契約書を作成します。

ただし、業務委託契約書の内容としては、契約を結ぶ時点では、契約書の記載内容としては馴染まない五条書類・五条書面の記載事項もあります。

こうした内容については、業務委託契約書以外の補充書面等で対応します。

三条書面の記載事項

下請法第3条と下請法三条規則では、以下の内容が、三条書面の記載事項とされています。

三条書面の必須記載事項

  1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
  2. 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
  3. 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
  5. 下請事業者の給付を受領する場所(役務提供委託の場合は、役務が提供される場所)
  6. 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
  7. 下請代金の額
  8. 下請代金の支払期日
  9. 下請代金の全部又は一部の支払につき、手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
  10. 下請代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払を受けることができることとする額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
  11. 下請代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
  12. 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法

これらの内容は、業務委託契約書にすべて記載できますので、当然、すべての内容を業務委託契約書に記載します。

また、契約締結の時点で明らかでない記載内容については、後日、補充書面を交付することで対応します。

五条書類・五条書面の記載事項

下請法第5条と下請法五条規則では、以下の内容が、五条書類・五条書面の記載事項とされています。

五条書類・五条書面の必須記載事項

  1. 下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
  2. 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
  3. 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、役務の提供の内容)
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
  5. 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日又は期間)
  6. 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)について、検査をした場合は、その検査を完了した日、検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
  7. 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、その内容及び理由
  8. 下請代金の額(下請代金の額として算定方法を記載した場合には、その後定まった下請代金の額を記載しなければならない。また、その算定方法に変更があった場合、変更後の算定方法、その変更後の算定方法により定まった下請代金の額及び変更した理由を記載しなければならない。)
  9. 下請代金の支払期日
  10. 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及びその理由
  11. 支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段
  12. 下請代金の全部又は一部の支払につき、手形を交付した場合は、その手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
  13. 下請代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
  14. 下請代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額、支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
  15. 原材料等を有償支給した場合は、その品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
  16. 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価の全部若しくは一部を控除した場合は、その後の下請代金の残額
  17. 遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

    これらのうち、赤字のものは、業務委託契約書の記載内容には馴染まない、または記載できないものです。

    このため、赤字の部分については、必要に応じて、契約を結んだ後で、業務委託契約書や取引基本契約書+注文書・注文請書とは別の、補充書面に記載しておきます。

    または、以下の条件を満たした電磁的記録により保存します。

    五条書類・五条書面を電磁的記録にできる4条件
    1. 記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること(下請法五条規則第2条第3項第1号)。
    2. 必要に応じ電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に出力することができること(下請法五条規則第2条第3項第2号)。
    3. 記録事項を検索の条件として設定することができる検索機能があること(下請法五条規則第2条第3項第3号イ)。
    4. 業務委託をした日=注文日の範囲を指定して条件を設定することができる検索機能があること(下請法五条規則第2条第3項第3号ロ)。

    三条書面と五条書類・五条書面を兼用した業務委託契約書の記載事項

    以上の点から、三条書面と五条書類・五条書面を兼用した業務委託契約書の記載内容は、次のとおりとなります。

    (【】内はどちらの三条書面と五条書類・五条書面のごどちらの記載事項かを表しています。)

    1.三条書面と五条書類・五条書面兼用の業務委託契約書の記載事項

    すべての業務委託契約書に共通する記載事項

    1. 契約当事者の名称=親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可))【三条書面・五条書類】
    2. 発注年月日=製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日【三条書面・五条書類】
    3. 業務内容=下請事業者の給付の内容【三条書面・五条書類】
    4. 納入日・納期・作業実施日=下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)【三条書面・五条書類】
    5. 納入場所・作業実施場所=下請事業者の給付を受領する場所【三条書面】
    6. 検査期間・検査期日=下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日【三条書面】
    7. 報酬・料金・委託料(または、これらの計算方法)=下請代金の額(算定方法による記載も可)【三条書面・五条書類】
    8. 報酬・料金・委託料の支払期限・支払期日=下請代金の支払期日【三条書面・五条書類】

    2.現金以外で支払う場合の記載事項

    1. 手形を交付する場合は手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期【三条書面】
    2. 一括決済方式で支払う場合は、金融機関、貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日【三条書面】
    3. 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日【三条書面】

    3.有償支給原材料ががある場合の記載事項

    1. 原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法【三条書面】

    上記の1.の8つの記載事項は必須ですが、2.については現金決済であれば不要ですし、3.についても有償支給原材料がなければ不要です。

    ポイント
    • 下請法第3条、下請法三条規則、下請法第5条、下請法五条規則を参照して、8~10の必須事項が記載された業務委託契約書を作成する。





    三条書面と五条書類・五条書面に適合しない業務委託契約書は罰則が科される

    下請法第3条・第5条違反は50万円以下の罰金が科される

    三条書面の交付と五条書類・五条書面の作成・保存をしなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。

    つまり、三条書面と五条書類・五条書面に適合していない業務委託契約書を作成した場合、罰則が科される可能性があります。

    下請法第10条(罰則)

    次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、50万円以下の罰金に処する。

    (1)(省略)

    (2)第5条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。

    ポイントは、親事業者である法人に罰金が科されるのではなく、「その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」にも罰金が科される、ということです。

    会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。

    三条書面と五条書類・五条書面となる業務委託契約書は難しくない

    すでに解説したとおり、三条書面・五条書類兼用の業務委託契約書には、たくさんの記載事項があります。

    ただ、一般的に行われている多くの業務委託契約は、現金決済で、有償支給原材料がありません。

    このようなシンプルな業務委託契約の場合は、すでに述べた1.の部分の記載だけで足ります。もう一度確認してみましょう。

    1.三条書面と五条書類・五条書面兼用の業務委託契約書の記載事項

    すべての業務委託契約書に共通する記載事項

    1. 契約当事者の名称
    2. 発注年月日
    3. 業務内容
    4. 納入日・納期・作業実施日
    5. 納入場所・作業実施場所
    6. 検査期間・検査期日
    7. 報酬・料金・委託料(または、これらの計算方法)
    8. 報酬・料金・委託料の支払期限・支払期日

    これらは、一般的な業務委託契約書としては、最低限の記載事項で、これがなければ業務委託契約書とはいえないレベルです。

    これだけの内容で、「現金決済・有償支給原材料なし」の業務委託契約であれば、三条書面として扱われます(もちろん、個々の記載内容もしっかりと書く必要はあります)。

    なお、五条書類・五条書面としては、これだけでは不足ですので、その後の取引きの内容が記載された、別途の補充書面が必要となります。

    ポイント
    • 下請法第3条・第5条違反は、ともに50万円以下の罰金刑。
    • 法人だけでなく、個人にも罰則が科される。
    • 最低限のレベルの業務委託契約書でも、下請法に適合した契約書となる。





    製造請負契約は要注意

    下請法は、本来は製造業を意識して制定されたものです。実際の下請法の運用も、製造業者を強く意識して運用されています。

    このため、親事業者=委託者の立場では、製造業者間の製造請負契約では、下請法の規制について、注意を要します。

    一般的に、製造業では、委託者(=注文者)のほうが契約交渉上の立場が強く、受託者(=請負人)のほうが契約交渉上の立場が弱い傾向があります。

    このため、ともすれば下請法に抵触するような条件を提示してしまいがちです。

    このようなことがないように、委託者は、下請法に違反しない内容の契約書を作成し、受託者に交付します。

    なお、製造請負契約については、詳しくは、以下のページをご覧ください。

    【改正民法対応】製造請負契約とは?偽装請負にならない対策も解説





    ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約は要注意

    個人事業者・フリーランスエンジニアへとの契約は要注意

    また、再委託、下請け、外注等が半ば常態化している、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリの開発業務委託契約でも、下請法が適用されることがあります。

    特に、製造請負契約の場合などと違って、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリの開発業務委託契約の場合は、小規模な事業者(資本金1,000万円以下の法人・個人事業者・フリーランスエンジニア)への外注が多い、という特徴があります。

    こうした、資本金1,000万円以下の法人・個人事業者・フリーランスエンジニアへの外注のための業務委託契約の場合、委託者の資本金が1,000万円を1円でも越えている場合は、下請法の適用対象となる可能性があります。

    つまり、それだけ、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリの開発業務委託契約は、下請法が適用される可能性が高いということです。

    仕様書=三条書面

    下請法が適用されるソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約では、親事業者=委託者は、下請法の基準を充たした仕様書を作成する義務があります。

    というのも、仕様書は、「下請事業者の給付の内容」が記載された書面=三条書面の一部となるからです。

    仕様書の作成は、特に時間や費用がかかるため、つい簡単なものにしがちですが、これは下請法第3条違反です。

    このようなことがないように、親事業者=委託者は、できるだけ仕様を明らかにした仕様書を作成し、受託者に交付します。

    なお、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約について、以下のページをご覧ください。

    【改正民法対応】ソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約とは?





    補足1:建設工事請負契約は下請法の対象外

    建設工事請負契約は、次の通り、下請法の適用対象となる業務からは除外されています(かっこ書き)。

    下請法第2条(定義)

    (途中省略)

    4 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第2項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

    (以下省略)

    このため、建設工事請負契約書の作成については、下請法第3条・第5条を考慮する必要はありません。

    ただし、同様の規定が建設業法第19条にあるため、いずれにせよ、契約書を作成する必要はあります。

    なお、建設工事請負契約については、以下のページをご覧ください。

    建設工事請負契約における業務内容(工事内容)の決め方・書き方とは?





    補足2:三条書面と注文書・発注書の関係

    三条書面と注文書・発注書は、ともに契約の内容を通知する書面である点で共通しています。

    他方で、三条書面と注文書・発注書は、下請法第3条にもとづき交付される通知の書面(三条書面)であるか、または契約の申込みの意思表示を証する書面(注文書・発注書)、つまり民事上の効果の有無に違いがあります。

    三条書面と注文書・発注書の違い

    三条書面と注文書・発注書は、下請法第3条にもとづき交付される通知の書面(三条書面)であるか、または契約の申込みの意思表示を証する書面(注文書・発注書)=民事上の効果がある書面であるかの点。ただし、実務上は同様となるように運用がされることが多い。

    この他、三条書面と注文書・発注書の関係につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

    三条書面(下請法・フリーランス保護法)と注文書・発注書の違いとは?





    下請法が適用される業務委託契約書に関するよくある質問

    下請法が適用される業務委託契約書は、何に注意するべきでしょうか?
    下請法が適用される業務委託契約書は、親事業者(委託者)の手元に残る原本が五条書面・五条書類となるようにし、下請事業者(受託者)の手元に残る原本が三条書面となるように作成します。
    下請法に適合していない業務委託契約書を作製した場合、どのような法律違反となるのでしょうか?
    下請法に適合していない業務委託契約書を作製した場合、下請法第10条違反となり、50万円以下の罰金が科されます。この罰金は、法人だけでなく「その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」にも科されます