このページでは、委託者(クライアント)と受託者(経営コンサルタント、コンサルティングファーム等)とのコンサルティング契約書における業務内容の確定方法について解説しています。

一般的なコンサルティング契約では、提案書・企画書・見積書などの書面を契約書に別添として添付することで、業務内容を確定させます。

ひとくちにコンサルティング契約とはいっても、その業務内容は、契約内容や経営コンサルタント・コンサルティングファームによって、様々です。

このため、コンサルティング契約では、こうした業務内容をいかに明確に定義づけられるかが問題となります。

なお、一般的なコンサルティング契約は、コンサルタント・コンサルティングファームからの助言が中心となるため、契約の種類としては、準委任契約といえます。

ただし、契約内容によっては、仕事の完成を目的とした請負契約である場合もあります(何らかの成果物の作成を目的とした場合等)。

こうした契約形態を明らかにすることも、コンサルティング契約書では重要となります。

なお、この他の、コンサルティング契約の定義コンサルティング契約の契約内容のポイントにつきましては、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約とは?意味・定義について解説

コンサルティング契約書の作り方と重要な15の契約条項のポイントについて解説

 




コンサルティング契約とは?

【意味・定義】コンサルティング契約とは?

コンサルティング契約は、法令用語ではなく、民法や他の法律では、特に定義はありません。

一般的には、コンサルティング契約は、受託者(経営コンサルタント)からの知識・情報・ノウハウ・助言(=コンサル内容)の提供があり、これらのコンサル内容の提供の対価として、クライアントからの金銭の支払いがある契約です。

【意味・定義】コンサルティング契約(経営コンサルタント契約)とは?

コンサルティング契約(経営コンサルタント契約)とは、経営コンサルタント・コンサルティングファームから、クライアントに対し、知識・情報・ノウハウ・助言の提供とその知的財産権の利用許諾または譲渡があり、その対価として、クライアントから報酬・料金が支払われる契約をいう。

原則としてコンサルティング契約書の作成義務はない

コンサルティング契約は、法律上の規制がないので、特に契約書を作成する必要はありません。

ただし、下請法が適用されるコンサルティング契約の場合は、契約書(いわゆる「三条書面」)を作成する必要があります。

【意味・定義】三条書面(下請法)とは?

三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者対し交付しなければならない書面をいう。

下請法が適用されるコンサルティング契約につきましては、以下のページをご覧ください。

下請法が適用されるコンサルティング契約とは?条件・資本金の区分・業務内容は?

下請法が適用される場合、委託者(クライアント)は、親事業者になります。

こうなると、委託者(クライアント)の側がコンサル内容(=業務内容)が記載されたコンサルティング契約書を用意しなければなりません。

とはいえ、現実的には、受託者(コンサルタント)がコンサルティング契約書を作成し、委託者(クライアント)が下請法に違反していないかリーガルチェックをして使用する、ということになります。

なお、三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?12の法定記載事項や契約書との違いは?

コンサルティング契約は形がない契約

コンサルティング契約で経営コンサルタントから提供されるコンサル内容は、情報が主体となります。

これにより、コンサルティング契約は、形が残らない、つまり「形がない契約」となります。

例外的に、書面・データでの調査報告や、成果物の作成(例:業務マニュアルの作成)が中心となるコンサルティング契約の場合は別ですが、そうでない場合は、コンサル内容は、形には残りません。

すでに触れたとおり、契約書の作成すら必要ないのがコンサルティング契約です。

このため、委託者(クライアント)としては、コンサルティング契約の業務内容つまり、受託者(経営コンサルタント)が何をするのかがよくわからない、ということになりかねません。

ポイント
  • コンサルティング契約とは、一般に、経営コンサルタント・コンサルティングファームから、クライアントに対し、知識・情報・ノウハウ・助言の提供があり、その対価として、クライアントから報酬・料金が支払われるもの。
  • コンサルティング契約書は、法律上、作成する義務はない。ただし、下請法が適用される場合は、「委託者(クライアント)」が三条書面を作成する義務がある。





クライアント側は必ずコンサルティング契約書等で業務内容を確認する

コンサルティング契約では提案書・企画書・見積書を確認する

そこで、クライアントとしては、コンサルティング契約を結ぶ前に、少なくとも、なんらかの媒体の資料で、業務内容=コンサル内容を確認するべきです。

こうした資料は、具体的には、提案書・企画書・見積書などがあります。もっとも、名前は何でもかまいません。大事なのは中身です。

クライアントとしては、こうした資料をしっかりと確認します。そのうえで、経営コンサルタントが「何をしてくれるのか」を、納得がいくまで説明を求めるべきです。

提案書・企画書・見積書が出てこない場合は?

なお、ごくまれに、こうした提案書・企画書・見積書が出てこない経営コンサルタントもいます。

クライアントとしては、自社の業務内容のプレゼンができない経営コンサルタントとコンサルティング契約を結ぶべきかどうか、よく考えるべきです。

提案書・企画書・見積書の作成は、本来は、経営コンサルタントが最も得意とする仕事であり、大手コンサルティングファームであれば、新入社員ですら作成するものです。

こうした提案書・企画書・見積書が出てこないということは、それなりの実力の経営コンサルタントだと判断するべきです。

ポイント
  • コンサルティング契約は形がない契約である以上、事前の提案書・企画書・見積書等の確認が重要。
  • 提案書・企画書・見積書等が出てこない経営コンサルタントは要注意。





業務内容=コンサル内容が不明確なのはトラブルのもと

経営コンサルタントは「何でもしてくれる」?

コンサルティング契約に限ったことではありませんが、知識や助言を提供が目的の契約では、クライアントの要求や要望が際限なく大きくなりがちです。

コンサルティング契約では、経営コンサルタントからのコンサルを受けた結果、なんらかの経営状態の改善が見込まれる、とクライアントは考えます。

少なくとも、負担する対価に比べておトクだと思うからこそ、クライアントは、コンサルティング契約を結ぼうとします。

このため、目的となる経営状態の改善のためならば、「経営コンサルタントは何でもしてくれる」と思い込みがちです。

営業の時点で過度な期待を抱かせるとトラブルとなる

もちろん、実際には、受託者(経営コンサルタント)としては、経営資源は限られていますし、その能力にも限界があります。

ただ、受託者(経営コンサルタント)の側も、営業の際に、どうしても「これだけの成果が見込めます。他にもこういうこともできますよ」と、クライアントの期待を抱かせるセールストークを展開しがちです。

こうしたセールストークは、受注には繋がりやすい反面、業務内容=コンサル内容のハードルを上げることになります。

結果的に、実際のコンサルの際に、そのハードルがクリアできないと、トラブルとなります。

経営コンサルタントとしては「しないこと」を明確にする

このように、コンサルティング契約では、クライアントと受託者(経営コンサルタント)との間で、業務内容=何をどの程度してくれるのかの認識に、ズレが生じやすいという特徴があります。

このため、成果が出ていない状態では、委託者の側から「最初の話と実際の話が違う」というクレームに繋がりやすいものです。

こうしたことがないように、コンサルティング契約書では、業務内容=コンサル内容=経営コンサルタントが何をするのかを、明確にしておく必要があります。

また、「何をするのか」も重要ですが、「何をしないのか」、つまり「コンサルティング契約書に書いていないことはしない」ことを明確にしておくことも重要です。

もっとも、「これ以外はしない」とツッケンドンに書いてしまうと角が立ちますので、一般的には、「別途見積もり」とか、「有料となります」というような書き方にします。

ポイント
  • 委託者(クライアント)は、「経営コンサルタントは成果が出るまで何でもしてくれる」と誤解(または故意に意図)しがち。
  • 受託者(経営コンサルタント)は、営業の時点で過剰なセールストークをすることもある。
  • 結果的に、双方の業務内容=コンサル内容の認識に食い違いが出やすくなり、それが原因でトラブルになることもある。
  • 受託者(経営コンサルタント)は、「しないこと」をハッキリと伝えてくことが重要。





コンサルティング契約書での業務内容の書き方・規定のしかた

必ずコンサルティング業務の概要は記載する

実際のコンサルティング契約への業務内容=コンサル内容の書き方は、非常に難しいと言わざるを得ません。

というのも、すでに触れたとおり、コンサルティング契約の業務内容=コンサル内容は、形がないものであり、事前に100%確定させることが困難だからです。

ましてや、こうした業務内容=コンサル内容を契約書に落とし込むために言語化するのは、事実上は不可能です。

ただ、概要くらいは言語化できますので、少なくとも概要(もちろん可能であればできるだけ詳細に)くらいは、コンサルティング契約に規定するべきです。

提案書・企画書・見積書を別紙として添付する

また、概要だけで業務内容=コンサル内容が明確化できない場合は、事前にクライアントに提示された提案書・企画書・見積書を、別紙として契約書に綴じ込むことがあります。

こうすることで、契約内容としては、文章だけで規定されているものよりも、よりわかりやすいものとなります。

もっとも、受託者(経営コンサルタント)としては、いわゆる「盛っている」提案書・企画書・見積書の場合は、ヘタに別紙扱いとすると、法的拘束力が発生し、自分の首を絞めることになります。

このため、場合によっては、コンサルティング契約書の規定として、提案書・企画書・見積書の法的拘束力を否定するよう規定することも検討します。

コンサルティング業務の提供の方法・回数・提供時間を規定する

次に気をつけたいのが、実際にコンサルティング業務をおこなう際、どのような方法や回数(1回あたりの時間)で提供されるのか、という点です。また、提供される時間帯等も重要となります。

これも、業務内容=コンサル内容と同様に、委託者(クライアント)は、過度の期待をしがちです。

こうしたコンサルティング業務の提供のしかたや方法を明確にしておかないと、一部の委託者(クライアント)は、営業時間外や、それこそ真夜中でも電話で相談に乗ってくれる、と誤解する場合もあります。

ですから、受託者(経営コンサルタント)としては、次のように、コンサルティング業務の内容・方法を明記しておくべきです。

コンサルティング業務の具体例

経営コンサルタントの側は、次の例のようにコンサルティング業務の提供方法・提供回数などを明確にしておく。

  • 訪問相談は毎月1回。1回あたり2時間まで。事前予約必須。
  • 電話・オンラインミーティングなどでの相談は毎月3回、1回あたり1時間まで。事前予約必須。営業時間内に限る。
  • 電子メール・チャットツールでの相談は毎月10往復まで(場合によっては文字数に制限をかける)。
  • 規定以上の相談の場合は別途見積もり。または回数・時間に応じてタイムチャージ。
  • (かなり高額な報酬・料金・委託料の場合や成果報酬型のコンサルティング契約の場合)訪問相談・電話相談無制限。ただし事前予約制。
  • (フルコミット型のコンサルティング契約の場合)委託者(クライアント)の事業所に常駐し、営業時間内は無制限にコンサルティング業務を提供。
  • (調査報告や成果物の作成がコンサル内容の場合)そもそも委託者(クライアント)からの相談は受付けず、成果物の提出だけがコンサルティング業務。

以上の内容は、あくまで一例に過ぎませんので、それぞれの経営コンサルタントによって、サービスの提供方法・回数は様々です。

成功報酬・成果報酬型の場合は成果の定義も規定する

成功・成果は数字で表せる定量的な指標とする

なお、成功報酬・成果報酬型のコンサルティング契約の場合は、「成功・成果」の定義が非常に重要となります。

成功・成果の定義は、数字で明確に計算できる、客観的・定量的なものとします。というのも、こうした定量的なデータにもとづく成功・成果の定義でなければ、達成したかどうかの判定が不可能だからです。

このため、一般的なコンサルティング契約では、成果を数字で測定ができない物事がコンサルティング業務の対象となる場合、成功報酬・成果報酬とはしません。

会計の指標やシステム上のデータを使うか別途KPI・KGIを設定する

コンサルティング契約における成功・成果の定義は、一般的には、売上・利益の向上や費用の削減など、会計上の指標とします。

これは、どのクライアントであっても、標準的な会計処理をしていて、事前にデータが備えられているからです。

また、ウェブサイトのアクセス解析のデータや、システムに蓄積されているデータなども、成功・成果の定義として活用されることもあります。

これらは、特定のジャンルに特化した経営コンサルタントが成功・成果の定義として設定することが多いです(例:SEOの経営コンサルタントなど)。

さらに、こうした事前のデータがない場合は、KPIやKGIのように、別途の目標を設定したうえで、その改善を成功・成果の定義とすることもあります。

ポイント
  • コンサルティング契約書には、必ずコンサルティング業務の概要を記載する。
  • 提案書・企画書・見積書をコンサルティング契約書の別紙として添付することもできる。
  • 経営コンサルタントとしては、コンサルティング業務の提供の方法・回数を規定することが重要。
  • 成功報酬・成果報酬型のコンサルティング契約では成果の定義を必ず規定する。
  • 成果は、必ず定量的な数字で計測できる定義とする。





コンサルティング契約は契約形態(準委任契約・請負契約)が重要

コンサルティング契約は、法律上の定義はありません。

ただ、一般的には、民法上の準委任契約か請負契約のいずれかに該当します。

あるいは、準委任契約と請負契約の両者が混じった、いわゆる「混合契約」である場合もあります。

それぞれ、契約の性質はまったく別物ですので、メリット・デメリットを考慮しながら決める必要があります。

この他、コンサルティング契約の契約形態に関する詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約の契約形態は?請負契約?準委任契約?





その他の業務内容を決める全行程は?

この他の業務内容につきましては、以下の行程で決定し、契約書の記載することとなります。

業務内容の決め方・書き方の全行程一覧
  • ステップ1:契約形態(請負型か準委任型か)を決定する
  • ステップ2:業務内容の項目をリストアップして決定する
  • ステップ3:しない業務や別途見積りにする業務を決定する
  • ステップ4:個々の業務内容を定義づける
  • ステップ5:業務の実施方法を決定する
  • ステップ6:業務の実施の日程、時間、時刻(時間帯)や時間の上限などを決定する
  • ステップ7:使用するツールを決定する
  • ステップ8:決定した業務内容をすべて契約書等の書面に落とし込む

この業務内容の決め方・書き方の全行程につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書における業務内容の決め方・書き方と全行程を解説





コンサルティング契約における業務内容に関するよくある質問

コンサルティング契約では、どのように業務内容を決めますか?
コンサルティングの内容にもよりますが、コンサルティング契約では、提案書・企画書・見積書などの書面を契約書に別添として添付することで、業務内容を決めます。
コンサルティング契約の契約形態には、どのようなものがありますか?
コンサルティング契約には、以下の契約形態があります。

  • なんらかの成果物の完成を目的とした請負契約型の契約形態
  • 知識、ノウハウ、アドバイスや作業の提供を目的とした準委任契約型の契約形態
  • 上記の2つの混合契約型の契約形態