このページでは、探偵業法の施行について解説しています。

探偵業法は、正式には、「探偵業の業務の適正化に関する法律」といい、探偵業者を規制し、依頼者を保護するための法律です。探偵業法の施行により、探偵業者は、開始しようとする日の前日までに、都道府県公安委員会にその旨を届出なければなりません。また、依頼者から一定の書面を徴収する義務、重要事項説明義務、書面(契約書)作成義務などが課されます。

探偵業法の概要と探偵業者の義務

探偵業法は、正式には、「探偵業の業務の適正化に関する法律」といいます。

探偵業法の目的は、「探偵業について必要な規制を定めることにより、その業務の運営の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資すること」です。重要な点は、「探偵業について必要な規制を定める」という点です。

もともと、個人のプライバシーや企業の秘密にかかる業務であるにもかかわらず、探偵業そのものを直接規制する法律はありませんでした。その結果、一部の悪質な探偵業者に対する規制の必要性が出てきたため、この法律が成立しました。

探偵業法は、契約実務上、次の3点が特に重要です。

1点目は、探偵業者は、依頼者から、調査結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない、ということです(探偵業法第7条)。

2点目は、探偵業者は、次の点の重要事項を説明しなければならない、ということです(第8条第1項)。

  1. 探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  2. 第四条第三項の書面に記載されている事項
  3. 探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の法令を遵守するものであること。
  4. 第十条に規定する事項
  5. 提供することができる探偵業務の内容
  6. 探偵業務の委託に関する事項
  7. 探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期
  8. 契約の解除に関する事項
  9. 探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する事項

探偵業務委託契約書の作成義務

3点目は、探偵業者は、次の点ガ記載された書面(探偵業務委託契約書)を作成し、交付しなければならない、ということです(第8条第2項)。

  1. 探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  2. 探偵業務を行う契約の締結を担当した者の氏名及び契約年月日
  3. 探偵業務に係る調査の内容、期間及び方法
  4. 探偵業務に係る調査の結果の報告の方法及び期限
  5. 探偵業務の委託に関する定めがあるときは、その内容
  6. 探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額並びにその支払の時期及び方法
  7. 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
  8. 探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する定めがあるときは、その内容

特に、3点目は、契約実務に直結する内容で、極めて重要な点です。

ただ、記載すべき内容そのものは、一般的な業務委託契約書であれば当然に記載されているべきもので、さほど厳しい規制ではありません。問題点は、むしろこのような内容を法律で義務づけなければならない、という探偵業界の実態にあります。

一般的に、契約書の作成が法律で義務づけられている業界は、その必要性があるほど、契約書や契約いい加減に扱われてる傾向があります(例:建設業、下請法が適用される製造業・ソフトウェア開発業など)。

このため、場合によっては、実際の契約書の使用や契約の運用もいい加減におこなわれる可能性があります。

ですから、探偵業者を利用する際は、重要事項についてしっかりと納得のいく説明をしているか(単に念仏を唱えるようにしゃべっているだけではないか)、探偵業法の基準を充たした契約書を備え付けているか、といった点ををよくチェックします。